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魂の本質

しばらくして、杉さんからメールがあった。カサンドラがおいらに会いたいのだという。おいらはすぐに返事して、その日の夕方に、近くの喫茶店の2階で会うことになった。

喫茶店に着くと、カサンドラはすでに来ていたのだが、杉さんはまだのようだった。仕方なく、彼女のいるテーブルの真向かいに腰を下ろした。コーヒーを注文して、彼女を見ると、今日は女子高生のような制服を着ていた。ただ、やはり化粧が濃すぎて、どう見てもまるで「ドラゴンボール」に出て来る、チャオズ(餃子)のようで、ものすごい違和感があったのだが、それは言わずにおこうと思った。カサンドラはまるでそこに誰もいないかのように、外の景色だけを眺めていた。そこからは、商店街から大きな公園に続く並木道に、オレンジ色の夕日がかかっているのが見えた。

ようやく杉さんがやってくると、「すまん、すまん、急な電話が入って遅くなった」そう謝るとすぐにコーヒーを注文した。次に、おいらをゆっくりと観察するように眺めると、満足したように頷きながら「ところで、どうだった、バッチフラワーは?」またいきなり、核心に迫ってきた。この人は多分、どうでもいいような世間話というものが嫌いなタイプなのかもしれない。実はそこが、おいらがこの人を気に入ってる理由の一つなのだが、酒も飲んでいないのに、いつも本心しか話さない相手というのは、本当は居心地のいい相手でもある。そこで、おいらは、自分に起こった変化をありのままに話した。「うん、やはりそうか、この前と少し感じが変わったものね」杉さんがそういうと、驚いたことに、それまで外をボーと眺めていたと思ったカサンドラまでもが嬉しそうに頷いたのだ。おいらが少し驚いて、カサンドラを見ると、相変わらずおいらから視線を外してしまうのだった。しかし、一瞬だが目が合ったように思えた。すると、彼女はすぐにこの前のように、カバンを開け、ガラガラと中身を掻き回すと、また一つ何かのバッチフラワーを取り出して、おいらの目の前に置いた。杉さんが、目でそれを受け取れと合図してきたので、手に取ってみた。おいらは、「アスペン」と声に出していってみた。

「アスペンはね」彼女ではなく、またすぐに杉さんが解説を始めた。「人の不安を対象にしているバッチフラワーなんだよ」「はぁ、不安ですか、不安なんて誰にでもありますよね」とおいら。今更なにを。「うん、確かに。不安は誰にでもある。その誰にでもある、というところが大事なんだよ。そして、不安には、強い不安もあれば、弱い不安もある」「もちろん、強い不安は苦しいが、弱い不安も実際は楽ではないだろう、例えば、大けがは、確かに痛くて苦しいが、チクチク来るトゲの痛みもやはり我慢できないからね」杉さんは不安について説明したいのだろうか?そんな当たり前なこと、こんなおいらでも知っているのに、、、。

おいらが、今一つ理解していないようすを見て、杉さんはまた新たな質問をかましてきた。

「じゃ聞くが、キョジャ君、不安はどこにある」「どこって、、?」おいら、、、、そうだね、じゃあ、問いをかえようか、不安をどこで感じるだろうか」「ん~、そうですね、やっぱり、この胸のあたりですかね」そう言って、自分の胸を親指で指でした。「そうだね、みんなそこで不安を感じるというね」「じゃぁ、なんで、そこで不安を感じると思う」「なんで、なんで、、、だろうか?」おいらは今までそんなことを考えたこともなかったので、なんて答えていいのか、皆目見当がつかなかった。

 

なぜ人は胸で不安を感じるのか???。

杉さんは少し間をおいて、こう言ってのけた。

「それは、人に魂があるからなんだよ」「魂、、、ですか」意外な答えにおいらは少しのけぞった。しかし、杉さんの目は真剣だった。

そこで改めておいらは椅子の上で姿勢を正し、杉さんの話に集中して耳を傾けた。

杉さんは続けた。「考えてみると、不思議だとはおもわないか、人間ならだれでも不安を感じるし、また様々な感情を持っているってことは」おいらは何と答えていいのかわからなかった。「言い方を変えようか。なぜ人は誰しもが同じ感情を共有できるのか」「たぶん、遺伝子に関係あるんじゃ、、、」おいらはなんとなく思いついたことを口にした。

「そうとも言えるね、感情のコードがなかったなら、人間同士お互いに感情を共有できないだろうからね「そうですよね、だからこそ、ギリシャ時代の人も、ルネッサンスの人も、また現代人も、お互いに理解しあえるのかもしれません」おいらはさらにとっさの思いつきを口にした。「その通りだ」「そして、なぜ人は不安を感じるかなんだが、それは、不安を感じることができる、というのが正しい」「不安を感じることができる!」

「さっき言いたかったのは、人には魂があり、それで不安を感じることができる、ということなんだ。なぜなら、魂の本質が、不安ではなく、ポジティブなものだから、もし、その本質がネガティブだったら、それが当たり前の常態だったなら、不安を不安と認識できないはずだし、不快とも何とも感じないはずだからなんだよ」「うーん、たしかに」またまたおいらはうなった。

人には不安を感じることができる魂があり、その本質は肯定的なものであり、感情は人類共通のいわば言語みたいなもの、そう杉さんは言ってのけたのだ。

「だから、不安を感じている部分を大事にするといい、そこに魂を感じ、その本質はこの宇宙を創った、根源の存在と全く同じ「ただ、ありて、ある」ポジティブなものを誰しもが持っていることに気付くための手掛かりだから」杉さん話においらは引き込まれていた。

「杉さん、さすがですね」おいらは尊敬のまなざしで、杉さんを称賛した。

「ん、あ~、実はこれ、カサンドラからの受け売りなんだけどね」杉さんは少し恥ずかしそうに隣に座っているお面をつけたような少女をみた。なんでも、カサンドラは宇宙人とチャネリングしているらしく、ときどき、杉さんに貴重な情報を伝えてくれるらしい。

「それで、この情報も、カサンドラがキョジャキーにどうしても話してくれっていうもんでね、がははは」杉さんは屈託なく大声で笑った。

「なんで、おいらに、、、」おいらがカサンドラに問いかけると、カサンドラは黙ったままで、急にすべてに興味をなくしたように、すでにどっぷりと暮れた商店街の街路樹を見つめているばかりだった。

「はぁ」ようやく、おいらはため息をひとつつくと「アスペン」をポケットにしまい、二人に礼を述べてその場を後にした。

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